地域社会と芸術の関わりを考える
活動の目的と内容
環境問題、経済格差、移民問題などの様々な問題に対し、アーティストがコミュニティや社会と直接的に関わり、人びととの対話や協働のプロセスを通じて状況の変化を促し、ひいては社会課題の解決を目指す「ソーシャリー・エンゲイジド・アート」が、国際的なアートの現場において注目を集めている。
日本においては、ソーシャリー・エンゲイジド・アートを取り上げる展覧会(「ソーシャリーエンゲイジドアート展 社会を動かすアートの新潮流」2017年2月18日~3月5日、於・3331 Arts Chiyoda)の開催や、川村文化芸術振興財団による「ソーシャリー・エンゲイジド・アート支援助成」が実施されている。他方で、大学が主軸となり、周辺地域と関わりながら、ソーシャリー・エンゲイジド・アートの手法をふまえ、研究者とアーティストが協働し、地域課題に取り組む先行事例は多くはない。
都市型の国際芸術祭として海外からも評価を受ける「横浜トリエンナーレ」の開催が20年以上続き、複数の地域主導のアートプロジェクトが根付く横浜市は、国内でも有数のアートの現場であり、多くのアーティストたちがアトリエを構える。こうした横浜市のアートティストの潜在的な力を学術研究の観点から引き出し、「ソーシャリー・エンゲイジド・アート」の手法をふまえ、美術史家、建築家、文化研究者、社会学者、アーティストらを主要メンバーとし、以下の事項に取り組む。
- アートと地域課題に取り組むためのプラットフォーム構築
- 横浜高等工業学校創立の地であり大学の学生寮が位置する弘明寺のアーティストとの協働を通じて、大学と周辺地域の関係をとらえなおす
- アーティストとの協働を通じ、課題を「外」だけに求めるのではなく、YNUミュージアムや学内の彫刻や森林など、大学内の文化資源のさらなる活用を目指す
地域課題解決・地域連携推進にどのように貢献するか
1963年、横浜・弘明寺にスーパーマーケット「長崎屋」として建てられたビルは、現在、国際的にアーティスト受け入れるレジデンスとギャラリーの機能を備えた「アートスタジオアイムヒア」や、国際的に活躍するアーティストの小泉明郎のスタジオがあり、また同ビル内には、若手クリエイターのシェアハウスとダンススタジオが入っている。弘明寺エリアのアーティストたちはオープンスタジオを行い、各々の活動を地域に開いているが、本校大岡インターナショナルレジデンスとの関わりはほとんどない。そうした現状をふまえ、以下の取り組みを実施したい。
- 弘明寺で活動するアーティストと横浜国立大学の学生の交流を促すためのイベントの開催
- 「アートスタジオアイムヒア」での地域社会とアートの可能性と学術的意義についてのシンポジウム開催
- 横浜国立大学YNUミュージアムなど学内施設を活用したワークショップの実施
アーティストと大学関連施設・地域の単なる交流の機会に終始するのではなく、学術的な知見をふまえたシンポジウムやワークショップ開催を通じ、アートと地域連携の先行事例となることを目指す。
メンバー
【活動代表者】
小田原 のどか (都市イノベーション研究院)
【学内分担者】
平野 恵子 (都市イノベーション研究院)
三浦 倫平 (都市イノベーション研究院)
【学外協力者】
小泉 明郎 (アーティスト、弘明寺・GMビルにスタジオを設立)
渡辺 篤 (アーティスト、「アートスタジオアイムヒア」(弘明寺)を主宰)
山本 浩貴 (文化研究者、実践女子大学文学部・准教授)
琴 仙姫 (アーティスト、法政大学社会学部・准教授)
庄 ゆた夏 (建築家、明治大学建築学科・教授)
(担当:地域連携推進機構)
地域連携推進機構
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