YNU地域連携 最前線

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世代を超えた地域交流を進めたい!旭区・左近山団地に住む学生たちが考えるまちづくり
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世代を超えた地域交流を進めたい!旭区・左近山団地に住む学生たちが考えるまちづくり

「YNU地域連携最前線」では、本学と包括連携協定を締結している自治体等との連携事業の中から注目される活動をピックアップして発信しています。第4回目は、旭区の左近山団地に居住し、地域支援活動を行う学生グループ「サコラボ」の活動の様子をご紹介します。

事業開始の経緯とこれまでの学生の活動

 横浜国立大学は、かねてより都市イノベーション研究院の教員や地域実践教育研究センターが県内賃貸団地等で研究・教育活動を行ってきました。この取組みをさらに広げるため、2016年3月に、独立行政法人都市再生機構東日本賃貸住宅本部と地域活性化に係る包括連携協定を締結しました。

 その後、横浜市のなかでも大規模な郊外団地が多く立地している旭区において、地域の担い手不足解消と地域コミュニティの構築を目的に、2017年3月に(独)都市再生機構、横浜市旭区、本学の3者間で「左近山団地における大学生による地域支援活動事業に係る連携協定」を締結し、学生の居住事業がスタートしました。

 この事業に参加する学生は、左近山団地に入居し、地域活動を行うことで、地域活動費助成金として一人あたり月額3万円の家賃補助を受けることができます。2人でルームシェアした場合は、一人あたり約4,000円の家賃負担額で居住できる場合もあります。

 この事業は、自治会が中心となり地域団体の連携で立ち上げたNPO法人オールさこんやまが事業主体として学生たちを受け入れ、地域との交流の場を提供しています。事業を開始した2017年度から、4名の学生が居住し、自治会や商店街と連携してビアガーデンイベントや流しそうめん、料理教室などのイベントを企画・実施してきました。2018年度末、初代メンバーは卒業し、左近山団地を離れましたが、新たに留学生2名を含む計5名の学生が居住し、2019年4月より地域支援活動をスタートしています。

まちづくりについて定期的に議論する「サコラボ」の立ち上げ

 学生たちは、今年度よりNPO法人アクションポート横浜の協力を得て、「サコラボ」を立ち上げ、月に2回程度、左近山団地のまちづくりについて議論しています。

 8月5日に行われた定例会では、6月に実施した地域交流を目的としたビアガーデンイベント「サコノミ」の反省と次回の計画について議論しました。

 「学生が商店街のおつまみをデリバリーして提供したことで、商店街の売り上げに貢献できた」「一方で、イベントに来てくれた住民と学生メンバーが交流できる時間が少なかったのではないか?」「参加者同士がもっと交流できるようにするにはどうしたら良いだろう?」と、学生たちの間で活発な議論が交わされていました。

写真1 サコラボ定例会でまちづくりについて議論を重ねる学生メンバー
写真1 サコラボ定例会でまちづくりについて議論を重ねる学生メンバー

若い世代の仲間を増やすため「U-25左近山会議」を企画

 「サコラボ」の定例会で議論を進める中で、「左近山団地に住む若者と知り合い、一緒に地域活動を盛り上げたい!」との意見が上がりました。そこで、25歳以下の左近山在住の若者と知り合い、学生の活動を紹介する場として「U-25 左近山会議」を企画しました。

U-25左近山会議ポスター

 イベント当日は、左近山幼稚園に在園していた学生など、4名の参加者が集まり、左近山団地にちなんだクイズに回答したり、お気に入りの場所をマップで紹介したりするなどして、和やかな雰囲気で交流を深めていました。

写真2 左近山団地のお気に入りの場所を紹介
写真2 左近山団地のお気に入りの場所を紹介

 この企画は若者向けのものでしたが、当日は左近山連合自治会の林会長をはじめ、地元住民や関係者の方々が集まり、学生の活動を見守っており、学生と参加者たちに「若者には、輝く将来と時間がある。自分たちが住むまちを支える、という気持ちを持って、色々な経験をしてほしい」とのエールが送られました。

学生たちの思いとこれからの展望

 「サコラボ」の代表で都市科学部建築学科3年の坂田直哉さんは「活動を行う中で、左近山団地内の様々な住民との出会いがあり、特に自治体や商店街の関係者の皆さんとは、時に冗談が言い合えるような、世代や立場を超えた密な関係を築けています。左近山団地は、元々自治会や商店街が季節ごとにお祭りを行っている、地元住民の結びつきが強い、あたたかい街です。学生が地域活動に参加して盛り上げることで、左近山団地の価値を高め、より多くの人に左近山団地の魅力を伝えていきたいと思います。」と活動への思いを語っていました。

写真3 サコラボ学生メンバー(前列)とU25左近山会議参加者
写真3 サコラボ学生メンバー(前列)とU25左近山会議参加者

 「サコラボ」の活動をサポートしているNPO法人アクションポート横浜代表理事の高城氏は、「学生は2~3年で代替わりするので、持続可能な運営ができる体制づくりに向けて、支援していきたいと考えています。ゆくゆくは学生が「ハブ」となり、人や情報など様々な地域リソースが行き来するような存在となることを期待しています。」と学生の今後の活動に期待を寄せていました。

 学生活動と並行して、建築学科の研究室が左近山団地のような高経年の郊外団地が抱える、高齢期居住の課題(孤立化リスクや住宅内で起きる熱中症やヒートショックのリスクなど)に取り組んでいます。特色としては、学生居住との相乗効果を目指していることです。たとえば学生が実際に住んでいることや活動していることが、高齢者の孤立化リスクにどのような効果をもたらしているか。あるいは、築約50年を経た団地住戸の断熱性の低さなど、実際に学生自身が住んでみて実感したことを活かした簡易改修実験とその評価など。このように、活動と研究を両輪として、今後も取り組んでいきます。

写真4 皆で左近山の「Sポーズ」!
写真4 皆で左近山の「Sポーズ」!

「左近山団地における大学生による地域支援活動」担当者より

 「サコラボ」では、メンバーが積極的に意見を出し合い白熱した議論を展開しています。彼らが企画したビアガーデンイベント「サコノミ」は、開催2回目で200人以上が参加し大いに賑わいました。イベントで提供するのは飲み物だけで、食べ物は学生が客から席でお金を預かり、肉屋、魚屋、豆腐屋、八百屋にお使いに行くユニークなシステムを採用した結果、住民や商店と学生との交流が生まれ、商店街の売上にも貢献しました。こうした活動を通じて横浜国大生が地域の方々に愛される存在になることを期待しています。
 現在、教育学部を対象に左近山団地で同じように入居し別のテーマで活動していただく方を募集しています。ご興味のある方は横浜国立大学 地域連携係までお問い合わせください。(旭区区政推進課 大規模団地再生担当)

学生居住は3年目に入り、学生は2代目になりました。当初は地域の方々と学生の皆さんとの距離感があったように感じましたが、今ではすっかり距離感がぐっと近くなっていると感じていますし、学生企画イベントに対する地域の方々の協力も得られるようになってきて、学生を軸に、地域の方々どうしの交流や連携の輪も広がってきています。左近山団地での経験は、学生の皆さんにとって大きな財産になるはずです。応援しています。これからも、地域の方々と学生の皆さんの地域活動が盛り上げるよう、尽力していきますので、どうぞよろしくお願いいたします。(UR都市機構)

参考

今回の連携事業の担当教員等

「サコラボ」学生メンバー 坂田直哉、西尾昂紀、藤澤太朗、楊 ナナ、金 建偉
都市イノベーション研究院 藤岡 泰寛 准教授
都市イノベーション研究院 野原 卓 准教授
都市イノベーション研究院 田中 稲子 准教授

編集後記

今回は、「入居1期生」のK君(現在は卒業している)に加わってもらいました。
T:入居1期生として、最もよかったことはなんでしたか?
K:老若男女、地域おこしに興味ある人ない人、いろんな人とたくさん接して考える、そんな日常を過ごせたことですね。
T:こうした試みをさらに有意義なものにするための提言もお願いします!
K:面白い試みを行い、それらをキチンと記しまとめ、次の面白いことにつなげる、その流れを作りましょう!
T:大学院でたくさん研究して成果が還元できるといいですね。

(担当:地域連携推進機構)

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