YNU地域連携 最前線

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野菜の鮮度が「見える」アプリ! 横浜銀行と地域農業の振興に向けた取り組みがスタート
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野菜の鮮度が「見える」アプリ! 横浜銀行と地域農業の振興に向けた取り組みがスタート

YNU地域連携最前線」では、本学と包括連携協定を締結している自治体・企業等との連携事業の中から注目される活動をピックアップして発信しています。第5回目は、横浜銀行と連携した地域農業の振興に向けた取り組みについてご紹介します。

きっかけは「産学官金コーディネータ委嘱制度」

 横浜銀行と横浜国立大学は、地域経済の持続的な成長・活性化に貢献するため、包括連携協定を2018年10月に締結しました。その後、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大により、地域の皆様から産学官金連携に対して大きな期待が寄せられたことから、2020年7月に産学官金連携コーディネータ委嘱制度を発足し、地域経済の活性化や諸課題の解決に向け、連携して取り組んでいます。

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産学官金連携コーディネータ委嘱式の様子

 この制度をきっかけとして、かねてより地元農家の声を聴き、支援してきた横浜銀行と、農業経済学を専門する、本学の大学院国際科学研究院 池島 祥文 准教授が、都市農業の課題解決について、連携して取り組むことになりました。
 取り組みの第一弾として、株式会社ルミネと横浜銀行が共同で開催した「横浜地産地消フェア」にて、農産物の収穫情報を利用した鮮度の可視化の実証実験を行いました。

ニュウマン横浜で行われた「横浜地産地消フェア」

「横浜地産地消フェア」は、横浜の食と農の魅力を発信するために、横浜市が「地産地消月間」と定める11月の週末に横浜野菜を販売する催しです。株式会社ルミネが運営する「NEWoManYOKOHAMA(ニュウマン横浜)」内にある、神奈川県産の食品やコスメ、カトラリーなどを取りそろえたマーケットプレイス「2416 MARKET」で開催されました。

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色とりどりの新鮮な横浜野菜が並ぶ「横浜地産地消フェア」

 この催しの期間中2日間、売り場に端末を設置して野菜の収穫情報を表示するとともに、来場者に教員・学生によるアンケート調査を実施しました。
 また、会場では、横浜国立大学アグリッジプロジェクトの有志学生が栽培した野菜の販売も行われました。当日の朝、大学近くの畑で収穫したカブが店頭に並ぶまでわずか3時間。収穫情報を掲載したことにより、より新鮮さが消費者に伝わったのか、一部の野菜は昼過ぎには売り切れるほどの人気ぶりでした。

収穫情報による鮮度の可視化実験

 売り場に設置された端末では、あらかじめ収集した収穫者の情報や農産物の収穫情報(収穫地点・収穫時間)が、アプリケーションを通じて、販売店舗のモニターにて表示されます。

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農産物の収穫情報が端末に表示され、一目で鮮度がわかる

 野菜が収穫された地点や収穫されてからの経過時間をリアルタイムに表示することで、消費者は陳列されている農産物の鮮度を確認しながら購入を判断できます。
 これまで経験や五感によって判断されてきた生鮮農産物の鮮度がデータとして「見える」ことで、消費者が容易に新鮮な農産物を購入できるようになるだけでなく、農産物に新たな付加価値が生まれ、地域農業の振興に貢献することが期待されます。

来場者へのアンケート結果

 実証実験と合わせて、来場者を対象に行われたヒアリング調査では、今回のような収穫情報を利用した鮮度の可視化を行うことで、消費者の購買行動にどのような変化があるのかを調査・分析しました。
 来場者66名に対し、「野菜購入にあたり鮮度情報は重要かどうか」、「今回のようなリアルタイムの鮮度情報が購入に影響するかどうか」等について調査を行ったところ、回答者の約80%以上が、野菜購入の際に鮮度を重視しており、今回のリアルタイム鮮度情報についても、購入に影響を与えた、と回答しました。

一方で、「価格を最も重視する」という消費者や、「鮮度はデータではなく、現物を見て確かめる」という消費者もおり、収穫情報は絶対視されているわけではないこともわかりました。

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ヒアリング調査の結果

 今回の実験ならびにヒアリング調査は、科学研究費基盤研究(C)「リアルデータを用いた農業食料ネットワークの解明と地域経済循環の可視化に関する研究」(研究代表 池島祥文 准教授)の一環として行われました。今回得られたデータを参考にしながら、農産物流通に伴う空間的、時間的、経済的なデータを収集・解析し、地産地消の流通実態、および、それに伴う経済循環の効果を可視化していく予定です。

今後の展望

 今回開催された「横浜地産地消フェア」を皮切りに、農産物を販売するマルシェの定期的開催も計画されており、今後、教員の研究活動や学生の地域実践活動とのさらなる連携が進むことが期待されます。これからも横浜銀行との活発な連携体制を維持し、協力して地域農業の振興に取り組んでいきます。

横浜銀行 地域戦略統括部 担当者より

 農業は地域経済を担う大きな産業の一つであり、地産地消が進むことで、地域経済の発展につながると考えています。今回の実験を通じて、生鮮農産物の鮮度がデータとして「見える」ことにより、農産物に新たな付加価値が生まれ、より消費者に地元産の農産物を手にとっていただけるようになることが分かりました。今後も引き続き横浜国立大学と連携しながら都市農業の課題解決を支援し、地域経済の活性化に貢献していきます。

参考

【プレスリリース】地産地消フェアにおける鮮度可視化実験の実施
横浜国立大学アグリッジプロジェクト

今回の連携事業の担当教員等

大学院国際社会科学研究院 池島 祥文 准教授
大学院都市イノベーション研究院 有吉 亮 特任教員(准教授)
大学院都市イノベーション研究院 西岡 隆暢 産学官連携研究員

(担当:地域連携推進機構)

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