2025年12月4日、本学第2食堂の協力を得て、アイゴの試食会を開催し、多くの学生や教職員にご参加いただくとともに、試食後のアンケート調査にご回答いただきました。
経済学部池島ゼミと地域連携推進機構Next Urban Lab「エディブルガーデン・エディブルキャンパス」による開催となりました。
未利用魚とサーキュラーエコノミー
未利用魚とは、本来は食用可能であるにもかかわらず、知名度の低さや調理の難しさ、安定した流通ルートが確立されていないことなどを理由に、市場に出回らず十分に活用されていない魚のことを指します。
これらの魚は、漁獲されても値がつかず廃棄される場合や、最初から水揚げされない場合も多く、水産資源の有効利用という観点から課題となっています。またこういった魚種は藻場の減少や海洋環境の悪化につながると指摘されています。
特に、藻場は多くの海洋生物の産卵・生育の場として重要な役割を果たしており、その衰退は水産資源全体に大きな影響を及ぼします。
経済学部池島ゼミでは、サーキュラーエコノミーについて研究しています。
サーキュラーエコノミーは「循環型経済」と訳出され、生産段階から素材の再利用などを視野に入れた設計を踏まえ、資源の消費をできるだけ抑え資源の効率的・循環的な利用を図りつつ、サービスや製品に付加価値をつけることを目指しています。
従来、廃棄物として処理されていた素材も再原料化し、全体としての資源投入用を抑えながら持続可能な経済を追求しており、いまや世界各国の政府、企業が取り組んでいます。
未利用魚の活用もこのサーキュラーエコノミーの文脈に位置づけ、その具体的な資源の循環的利用について検討を進めてきました。
試食会でのレクチャーとアンケートの実施について
本試食会は、下記の内容で実施しました。
試食の前後に簡易的なレクチャーを実施し、アイゴが未利用魚とされている背景や、藻場の食害問題、未利用資源活用の意義などについて説明しました。

試食およびレクチャー終了後には、参加者に対して紙媒体によるアンケート調査を実施し、味の評価、既存メニューとの比較、再購入意向、ならびに未利用魚に対する意識の変化などについて回答していただきました。
合計で86名の回答が得られました。

アンケート結果について、抜粋して紹介します。
アイゴフライの味に対して「非常に美味しかった(47.1%)」、「美味しかった(46.0%)」と回答した学生は全体の9割以上に達しました。学食メニューである白身魚フライと比較しても、「変わらない(55.2%)」「今回の方が良い(20.7%)」とする回答が多数を占めています。
もちろん、「普段の白身魚がよい(24.1%)」という意見も少なくありません。
再購入意向に関する設問では、「ぜひまた食べたい(71.3%)」と答えた学部生が多く、アイゴフライへの評価が高いことが確認されました。
また先述した通り、アイゴは藻場を食害する魚として漁獲される一方、利用が進まず廃棄されることも多い未利用魚の1種です。アンケートでは、再度食べたいとする理由について、複数回答ながら「環境・藻場などへの影響を聞いたから(27%)」や「食べることで環境にも優しいから(23%)」と回答しており、水産資源や環境問題への理解と食生活を結びつける姿勢がうかがえました。また、横浜国立大学大学オリジナルメニューへの期待を問うたところ、「食べたい(80.5%)」と非常に関心が高いこともあり、今後の展開が気になる結果となりました。

未利用資源活用に向けた今後の展望
神奈川県の海辺でも藻場が消失する「磯焼け」が大きな課題となっており、藻場再生は海洋環境の回復にとって非常に重要な取り組みです。本学の臨海環境センターでも、こうした藻場再生にむけた実証実験に取り組んでいますが、再生しつつある海藻がすぐにアイゴやブダイなどの植食性魚類に食べられてしまう事態が起きています。
藻場の再生にとっても、植食性魚類を駆除することが必要ですが、駆除のためにも、商用利用が可能な資源として活用していく必要があります。本試食会は、そうした資源活用にむけた実験機会としても位置づけられています。
今後も引き続き、未利用資源の活用による環境保全にむけた教育研究に取り組んでいきます。
最後になりましたが、アイゴをご提供いただいたFarmer You代表の田尾さま、食堂利用を快く許可いただいた横浜国立大学大学生協さまに感謝申し上げます。
関連ページ:
Farmer Youウェブサイト(試食会当日の様子についてご紹介があります)
臨海環境センターウェブサイト
(本学プレスリリース記事)IJTT と 横浜国⽴⼤学が共同で藻場再⽣に関する共同実証研究を開始
(担当:地域連携推進機構)



