横浜国大発!オンラインゲームで学ぶまちづくり
コロナ禍で揺れた2020年度は大学全体としてオンライン授業が中心となり、対面式の授業では当たり前であった教員と学生との間のインタラクティブな学びも難しい状況でした。そのようななか、オンライン授業であっても、アクティブラーニングの本領を発揮した事例も生まれました。
神奈川県は都心に近い東部とそれ以外の県央、県西と大きく性格を異にしており、全国的には首都圏にある豊かな地域と認知されている一方で、県内における都市間格差が大きいという特徴があります。なぜ、地域は疲弊しているのでしょうか、そして、どうしたら地域再生ができるのでしょうか。こうした問題にアプローチするため、本学では理想的なまちづくりを目的とした、ユニークな授業が実施されてきました。
この授業は、全学教育科目(教養教育科目)「地域連携と都市再生B【かながわ地域学】」(都市科学部 基幹知科目)で、2020年度は全学部の1-4年生246名が受講しています。地域の課題解決を担う人材を実践的に育てることを目的とした副専攻プログラム「地域交流科目」のコア科目としても位置付けられています。全15回の授業は、講義・実践(シミュレーション)という2つの形式で構成されています。このうち実践編では、miro(ミロ)というホワイトボードの役割を果たすオンラインツールを利用して、実際にまちづくりのプロジェクトを、ゲームとして行います。
オンラインツールを利用したまちづくりゲーム
学生は、それぞれ5名程度の少人数チームに分かれ、役場と住民というプレイヤー設定をしたあと、「どのような選択をすれば理想的なまちができるのか」について、議論を行い、実行に移します。各政策やアクションとして、「バイオマス施設を作る」「電気自動車を普及させる」「食品ロスを減らす」など様々な選択肢が用意されています。これらについて、SDGsに資するかどうかや、地域へのメリット、インパクト、制約等を勘案して決定し、チームとしての得点を上げていきます。しかし、災害やグローバル化、感染症流行の影響など、思わぬハプニングが起こることもあります。最終的に、一番スコアが高いチーム、つまり理想とされるまちに到達したチームが優勝です。
現実感にあふれたゲームを進めるなかで、学生は、まちづくりに向けて、主体的に関わっていきます。それまでの講義形式で得た学びを参考にしつつ、チーム内で話し合い、「○○だから△△にしませんか」といった理由を示した提案、「そうしましょう」といった同意の意思表示が行われます。正解のない課題について答えをだしていくことを通じて、コミュニティの構成者として成長が促がされます。また、学生たちは、ゲームをする中で、「こうすればできますよ」「これは私がやりますね」など、互いに助け合っており、「助け合いこそがまちづくり」であるという教育者側の意図を、自然に体得していきます。
この授業は、ゲームという学生にとって親和性の高い手法によって学習意欲を喚起させるとともに、自ら考えを深められる仕掛けを多く用意しています。これは、いま教育的手法で注目が集まっている、アクティブラーニングと言われるものです。各回の授業後は、学生の感想をシステム上で全体に共有しているので、他の学生の意見や見方を知ることができます。担当教員によれば、オンラインであるからこそ、学生たちがお互いに高めあうことができているそうです。
新型コロナウィルス感染症の拡大により、オンラインが否応なく浸透していく中で、コミュニケーション不足や精神的ストレスなども指摘されています。しかし、オンラインの良さを活かし、オンラインだからこそ効果的な学びに昇華させることも可能です。
さらに、担当教員3名は、建築デザイン・農業経済・地方財政という異色の組み合わせで、地域再生に関して、複眼的に考えることの大切さを教えてくれます。これは、本学が得意とする文理連携、学際型の教育研究を表徴するものです。
こうしたオンライン授業の工夫は、新たな発想や準備が必要となるため、教員側での準備は容易ではありません。しかし、教育や学びとは何かという原点に立ち返ると、必ずしも従来型の形式に拘泥する必要はありません。担当教員らは、いずれにせよ大変な思いをするのであれば、学生たちが楽しみながら未来につながる知を提供したい、という信念をもって臨んでいます。
大学理念に"Be Innovative."とあるように、本授業は、オンラインというニューノーマルをどう活かしていくかを体現している、横浜国大ならではの創造的な学びの場といえます。
(担当:地域連携推進機構)